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【企業の森の類型化 ~ルイビトンの森~】

古川大輔
森林・林業・製材・材木・住宅
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【企業の森   
~環境活動の見られ方~
坂本龍一とルイヴィトンの森】


たまたま先月手にしたクーリエジャポンに、
ルイヴィトンの森が特集されていましたので、
そろそろ「企業の森」について、ちょっと書いてみようと思います。

さて、キーワードはもちろん「利益」と「理念」
そして「森林」「林業」「ブランド戦略」「業績」ということでしょうか。

さて、世の中的には、

ルイヴィトンの森

トヨタの森

サントリーの森

西粟倉の森

天竜・吉野・尾鷲の森

高野山の森

も一緒なのでしょうか?


ルイヴィトンの森は
企業の森でも特別なインパクトがあったようです。
ただのルイヴィトンファンが、
日本の森に注目してくれることはありがたい。

さて、
日本の森とはなんでしょう?


森には「森林」と「林業」がある
森には「天然林」と「人工林」がある。
森には「里山」も「奥山」もあるわけですが、


よく、人工林と天然林などの
二対論が多いようですが、行き過ぎた人工林批判も問題ですし、
また、森林=林業としてしまうのも行き過ぎた感があります。


天然林だ人工林だと
森林だ林業だと、その違いを述べていく必要は今はなく、
このような「森は大切」という世論の醸成期なるときは、
総意として「森は大切」という全体量が増えていけばよく、
いずれ、成長期を向かえ、衰退期でキチンと、
それらの森の定義や必要性は、細分化されていくから、安心していたほうがよいです。


今は、

「都市」と「森林(山村)」


という二対論があるから、森林に素直に注目できます。


「森は大切」

まずは、それだけでいいと思います。

だから、森を後世に残すために、
手入れが必要で、木が大切だということを真摯に伝えていくことが、
人々と森との繋がりのスタートになります。


ここへ沢山のかたが目を向けてくれて、
その何割かが、林業に目を向けて、
管理の大切さ、伐採することの大切さ、
そこに気付けばまた次の「知」のライフサイクルがやってくるでしょう。

その話はまた別ですが、まずは「森は大切」です。

森を守ると
綺麗な水を守ることになるし、
生き物も沢山いるし、
二酸化炭素も吸収してくるという、色々な価値があるわけです。
子供にとってみれば秘密基地も創りやすいというのも価値でしょう。


結論として、「企業の森」なる流れに、
実際に現場で山を守られている人、山仕事をしている人は、
しっかりと、これらに便乗したほうが良いということです。

私は、昔から
林業や木材や木工に係わる方に出会って
この世界の魅力に取り込まれました。

しかし、
何年も前からよく言っていますが、

「木を植えるのは誰でしょう?」というと、

いまの日本人は、
「イオンです」と。

悲しいことに、
林業者でも森林組合でも山主でもないんです。

そもそも、多くの人が、林業や森林組合なんて、存在すら知りません。

この現実に向き合いつつ、
昔ながら、生活の一部として山を守り、
山を生業としていた人たちは、真面目すぎて、いこじで、
伝え方が下手という理由のみで、


1森林の産物としてのメインである木材の営業も弱く

2森林としての多面的な「美」もうまく伝えられず

3山岳信仰なる山の神々の世界も消えてしまう


そこに新興勢力です。
企業の森なわけです。


地域再生の仕事をしているとき
ある地方自治体の方がこういいました。

みなこの地域を捨てて、
中央集権システムのもと、
記号化されたTOKYOへゆくという事実を、

「それは、財産放棄に等しい。
だからこそ
外(都会)の人がそれ(例えば森)を大切だといって、
その理念でもってして守り、伝え、
最終的に(間接的に)利益に変えていくのは思う存分、
ドンドンとやって欲しい」

と。


むろん反論もありましょうが、深い言葉だと、
ある山村地域でお酒とともに、飲み込みました。

さて、
「環境」意識については、
利益Xと理念Yのポジショニンとベクトルがあります。

理念なき利益は犯罪
利益なき理念は寝言

です。(このあたりの話は割愛します)

自分たちそれぞれ立ち位置が、それぞれにあります。
たどってきた道も違います。

ただ、みな地球は大切だというのは同じ。

その方向に向かっていると思っていても、
ポジショニングやベクトルがずれていると、
どうも肌に合わぬ、など小さな分離を繰り返してしまうらしいのです。

地元の木を使った家作りの会など
日本のあらゆる地域で見てきましたが、

同じ理念で集まっても、
流通上100%地元の木は難しい、まずは60%でいいからやってみて、
利益にして、組織(例えばNPO、事業組合)をまわしていこうという人と、

いや年間2棟でもいいから、100%地元の木でやるべきだという人と、
意見があわず、分裂する組織を良く見てきました。

多くの山林を守るという団体が「理念」の到達を第一にしています。
非常に大切なことです。

「利益」だけを目的にして、創った家に欠陥があり傾こうが、
産地が偽証されようがいいと、犯罪級の企業が多くなる昨今、
「理念」第一の団体(企業は)輝いています。

しかし、理念だけで「利益」を軽んじ、結局、
顧客も、取引先も、謝意インも、関係する人、誰一人も幸せにできない
パターンも多い。

だから
それぞれ意思をもった
利益と理念のポジションとベクトルが重要です。


何度も講演で申し上げておりますが、
ロハスにも二種類います。

ヒルズ族からのロハスへの転身と
エコロジストからのロハスへの転身です。

前者は、今まで地球を壊してきた反省ロハス。
後者は、利益がないとやっぱりダメだという追随ロハス。


でも、どちらがいてもいい、
それがロハスだと思います。


先月、
COURRIER JAON(クーリエジャポン)11月号
を読みました。

ルイヴィトンの森については、

・ルイヴィトンが長野県小諸市の森104haを整備
・3年間事業費1千万円を支援
・間伐をして森全体を健康にしていきたい
・ルイ・ヴィトン5代目当主のパトリック・ルイ・ヴィトン氏は
「木を使った物作りの精神は、森を保護する精神と同じと抱負
・「何につけても格好良くないと続かないし、広がらない。
・ヴィトン側は、創業者が仏・ジュラ山脈の山すそ出身で森
に関心が深く、04年には同社の製品輸送の60%を空輸から海上輸送へと切り替えた。
・エコにはファッションが必要だし、(有名ブランドの協力は)
それだけエコが浸透してきた証しだと思う」(坂本)


参照
http://www.asahi.com/national/update/0907/TKY200909070276.html
朝日新聞

http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/nagano/090908/ngn0909080248001-n1.htm
産経ニュース


さて、クーリエジャポン。
表紙は、坂本龍一 責任編集 森と地球の未来


責任編集ってなんだ?と教授のポジショニングが、いまいち、
よくわからないのですが、知名度は音楽から森へと嬉しい動きです。


内容は以下などありました。

・ネパールの太陽熱を利用したコンロ
・デンマーク サムソ島 4300人 風力100%エネルギー自給
・マサイ族 エコツアー
・肉1kg自動車は250km走れる!?地球の未来は草食系が救う
・食用の密漁が後をたたないゴリラ
・話題の映画「ザ・コーヴ」の公開で日本のイルカ漁に批判続出
 和歌山県太地町 
・モアトゥリーズ ルイビトンの森 長野県小諸市
 パトリックルイヴィトン(5代目) 坂本龍一 対談
・ゴールドマンサックスの錬金術「疑惑」と「怒り」


いわゆる「環境」が大好きな草食系には
喜ばれる肉食的な内容でした。

実際は、

理念を持つだけで美しい、
森を持つだけで美しい、
ポストモダンは美しい、

というわけではありませんが。

若干、利益への盲目的な批判が気になりますが、これも読者が、
どの利益と理念のポジションにいるかでしょう。

この雑誌。かのナショナルジオグラフィックほどまで尖りきっ
ていないためか、ルイヴィトンの森で坂本龍一がルイヴィトン
とデカイロゴマークがでかく入った服を着てルイヴィトン代表
と笑顔で森の中で写真をみると、神聖なる檜や唐松の森の本来
目的はいったい何かと、思う方はいるでしょう。


もちろん、
森を守るのは
企業の「ブランド戦略」の一環です。

中長期的な利益が見込まれない場合、
CSRなど企業はやりません。


なにもかもが「環境が大切」だというのはもう時代遅れです。

そういう環境活動なるものをやっているところは、
そのうち自社の利益がでなくなると森を手放します。


トヨタの森は、
エコが大事というイメージを消費者に伝え、
それでプリウスの販売へと繋げています。

サントリーの森は、
「水と生きる」というコーポレートメッセージ(ブランドボイス)
をもっていることからわかるよう、
おいしい飲料水はおいしい安全な水から。
その、水を守るのは、森を守ることから始まる。
ということで、本業と繋がっていくわけです。

これら、
トヨタ型やサントリー型は、
森のもつ「木材価値」としてではない、
「多面的機能(二酸化炭素吸収、水源涵養 など)」
というものから、自社の商品との結びつきをコントロールし、
ゆえに企業の森を守るという動きになっています。


また、
住友林業の場合は、
森のもっとも経済価値につながる、木材としての価値を土台に、
持続可能な資源循環を目指すということから、
住友林業の森があります。


それでは、
ルイヴィトンの森は?
ということですが、
これは、自社の商品とのつながりは一切なく、
ルイヴィトンカップなるヨットの世界と同様に、
「夢(チャレンジ)」というつながりです。


森のもつ木材価値だけでもなく、
森のもつ森林の多面的機能だけでもなく、
その両方を包含して、ブランドイメージを喚起していきます。

(もしかしたら、
ルイヴィトンの無垢材使用も出てくるかもしれませんが・・・)

「で?かわいいの?」

というところが商品価値ですから、
そこをつなげると、より真価を発揮されるでしょう。


しかし、こういうところは、
ホンダのF1のような立ち居地になりやすく
本業のダメージとの関連性はきわめて高いのでしょうが、
ルイヴィトンの場合は、
それを感じさせないブランド力がありますので、
さらに森の所有が、たんなる企業CSRではなく、
上位概念として存在しています。


企業は戦略上予算の振り分けを
以下の4つの事業に分けて、そのバランスを問います。

・主力事業(自動車・バイク)
・補助事業(農機など)
・開発事業(アスモ)
・刺激事業(F1)


よって私なりにまとめますと
「企業の森」なるものは、
あくまでも単純なるイメージアップだけではなく、
開発事業か刺激事業かのどちらかになるわけです。


トヨタの森は
林業が
もしかしたら主力事業になるかもという期待もありますが・・・。

さて、これらを図式化すると

企業軸は
 「本業商品」か「本業商品以外」か
森軸は
 「木材価値」か「多面的機能」か

ここの2×2のクロスで
接点を良く考えてみると、企業の森が良く見えてきます。


そこでトビムシの係わっている森は
かなり、直球ものが多いのですが、
それが直球すぎると、世論(消費者)から遠くなるので、
本業商品以外や多面的機能での接点をふやし、イメージを高めています。

これは私の雑感ですが、

あくまで「林業」は、
農業と同じで、間引きもするし、収穫もします。
それが1年か50年(100年)かの違いです。

林業は伐採というから、ダメなので、それは「収穫」です。
林業は人工林というから、ダメなので、それは「育成林」です。

確かに植えすぎた人工林というのもありますが、
花粉症も昔から森はあったわけで、
現代病の一つであり、森に責務を100%負わせるのはかわいそうです。

当時は正しいという過去の偉人たちの選択に
あなたはその時代にそういう判断をしたのかといいたくなります。

そもそも、
本気で森を(企業を)悪くしようと思っている人はいません。

しかし、森は、いまどこへ?誰のものへ?

だから、
この動きは憂うのでなく嬉しいことなのです。


「地域の宝を財産放棄にほかならない」

というひとがいるのであれば、
使い方、伝え方は、その資本強者の反省的なエコであっても、
伝えようにより、美しくなるんですね。


同じく日本の山林を活かそうと地場企業として、
小さな製品、小さな商品の発表をしても、
世間は誰も注目されていないのが現実で、悔しくもあります。


だからトビムシは、うまく時流に乗りつつ、
より直球で伝えようとしているのです。


日本の森林面積は昭和41年で2517万ha、平成19年で2510万ha
とここ40年でまったく変わっていない。しかし森林の蓄積は、
昭和41年で1887百万立米であるのに対し、平成19年では4431百
万立米となり2倍以上も増えている。日本の山村地域にはもう
、もっと木を!という概念は、まず必要ないんです。

(場所によりますが・・・)


「え?木って切っていいの?」

東大農学部を出た人ですらいいます。
これが現実です。

そりゃ、鎮守の森の木を切るのと、
町の景観で美しくそびえている木を切るのと、
林業の世界の木を切るのと、
ぜんぶ一緒です、いっぱんの人は。

だから、
私のクライアントさんたちが行っている
林業教室や自然教室を受けている子供たちのほうが賢いものです。

教育の面と
妄想の面でと。

理念の面と
利益の面でと。

山林の経営努力の結果として、
山林の美を伝え、木材の暖かさを伝えていきたいものです。

で、トビムシ。

実直に林業という生業を通して、伝承された技術文化というも
のに正面から立ち向かい、若干新しい伝え方をしていくという
スタンス。

トビムシは、その名のとおり影ながら森林を中心と
した地域社会を支える存在。地域の人たちに光を当てたい。

みなそれぞれに理念があり、利益がある。

TOKYOの欲望資本の余剰で伝える森も、
意思ある地域社会のメンバーで指させる森も、出口は一緒です。

目の前の、杉と檜の立ち木と製品を愛して、
直球とたまに変化球。

そんなスタンスで実直に目の前の顧客と創り上げる、
それこそ魅力。

流行はすぐ廃れる。

だから、乗っかるときにひょいと軽く乗ればいい。
降りるときも早い。

しっかりと
この時流に乗りながら、
目の前のことに自信を持って
対峙していくことが大切です。


「よろしく公論百年俟って玉砕せんとす」
河井継之助 (峠より)


私たちのミッションは以下です。

地域の眠れる資産を顕在化し
森への期待を喚起し、
人々の連綿たる想いをつなぎ
世の流れを創造する。



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1200年の森、弘法大師空海の
世界遺産・高野山の森の尊厳護持のための仕事をした帰り、
難波駅でルイヴィトンのショーウインドウをみる私



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